During AHA2008 New Orleans
AHA2008の期間中、開催地ニューオリンズにおいてアディポネクチンとアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)という、
最近話題の2つのテーマに焦点を当てたMorning Seminarが開催された。その概要を紹介する。
カンデサルタンはACE2欠損マウスにおける心機能障害を改善する
佐田 政隆 先生
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部循環器内科学教授
室原 豊明 先生(座長)
名古屋大学大学院医学系研究科
循環器内科学教授
最近、アンジオテンシン変換酵素(ACE)のホモローグ(相同蛋白質)であるACE2の存在が研究者の注目を集めている。佐田氏はACE2欠損マウスを使った検討で、ACE2の心機能保護作用を確認するとともに、ARBカンデサルタンの低用量投与がACE2欠損マウスにおける加齢や急性心筋梗塞後の心機能障害を改善するとの成績を紹介した。同講演の座長は、名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学教授の室原豊明氏が務めた。
注目を集める ACE2とAng-(1-7)の役割
2000年にACE2の存在が報告されてから(Donoghue M et al.Circ Res 2000;87:e1-e9)、レニン・アンジオテンシン(RA)系の研究は新しい局面を迎えることになった。ACE2は、アンジオテンシンU(AngU)をアンジオテンシン(Ang)-(1-7)に変換する酵素だが、AngUが血管収縮作用を持つのに対してAng-(1-7) は血管拡張作用を持つことが分かり、ACE2の存在がにわかにクローズアップされた。ACE2 mRNAは、精巣・腎臓・心臓などに非常に多く発現すること、またACE2蛋白は主に血管内皮に発現することなどが報告されている。
さらに、ACE2欠損マウスを使った研究から、ACE2が心機能調節(Crackower MA et al.Nature 2002;417:822-828,Yamamoto K et al.Hypertension 2006;47:718-726)や血圧調節(Gurley SB et al.J Clin Inves 2006;116:2218-2225)に重要な役割を果たしていることも分かった。心筋梗塞後ではACE2を介してAng-(1-7)が増加し(Zisman LS et al.Circulation 2003;108:1707-1712,Averill DB et al.Circulation 2003;108:2141-2146)、不全心ではACE2が増加している(Goulter AB et al.BMC Med 2004;2:19)との報告もある。
低用量カンデサルタンが加齢による左室機能不全を改善
こうした状況を背景に我々は、「ACE2/Ang-(1-7)およびACE/AngUの間のバランスが心血管系ホメオスタシスを維持している」という仮説を立て、マウスを使ってこれを検証した。
まずACE2欠損マウスと野生型マウスを使って、加齢に伴う左室機能不全について検討した。左心機能は心エコー法で左室拡張末期径、左室収縮末期径、短縮率を評価した。併せて血行動態や組織学的解析も行った。12週齢ではACE2欠損マウスと野生型マウスの間で、左心機能に差はなかった。しかし24週齢ではACE2欠損マウスで有意な心拡大が出現し、収縮・拡張機能の障害が認められた。一方、10週齢から血圧に影響を与えない低用量のARBカンデサルタン0.1r/s/日を投与したACE2欠損マウスでは、カンデサルタン非投与のACE2欠損マウスよりも左室拡張および収縮末期径、短縮率が有意に改善した(図1)。カンデサルタンはACE2欠損マウスにおける脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の上昇も減弱させた。カンデサルタン非投与下での比較では、ACE2欠損マウスでは野生型マウスよりも血漿および心筋AngUが有意に増加した。一方、血漿Ang-(1-7)に関しては、ACE2欠損マウスでは野生型マウスよりも減少傾向にあった。
以上の成績から、ACE2欠損マウスでは加齢に伴って左室機能不全が生じるが、これにはAT1受容体刺激が重要な役割を果たしていること、また、ACE2が心機能保護に働いていることなどが示唆された。
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